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ヒグマ, 対策, 対処, 対応, マニュアル

もしも不意にヒグマに出会ったら…

 

■近距離での突発的遭遇時のヒグマ対応マニュアル

■決してヒグマに背を向けて逃げない。

ヒグマに背を向けて逃げるのは自殺行為です。

走って逃げるとどうなるか…

ヒグマは本能的に素早く動くものに反応します。もしもあなたがヒグマから走って逃げるとヒグマは高い確率であなたを追いかけてきます。ヒグマの走る速度は瞬間最大速度で時速60kmに達すると言われ、仮にあなたが走って逃げたとしてヒグマから逃げ切ることは100%不可能です。

 

では逃げずにどのように対応するのかというと…

 

■ヒグマが自ら立ち去るのを待つ。

落ち着いてゆっくりと静かに行動すること…

多くの場合近距離での突発的遭遇ではあなたにとってはもちろんのことですが、ヒグマの方にも相当の驚きから強いストレスがかかっています。 あなたの突発的な行動は怯えているヒグマをさらに恐怖させ、ヒグマは自身の防衛のためにあなたに対して攻撃して来る可能性を高めてしまいます。

近距離での突発的な遭遇ではあなたはまずヒグマをこれ以上怯えさせることのないよう慎重に行動することが求められます。あなたはゆっくりと確実な動作で「 熊撃退スプレー 」の安全装置を解除し、ヒグマに向けて発射の用意をしてください。 ヒグマの行動を観察してこの時点でもし可能そうであるなら決してヒグマに背を向けずゆっくりとヒグマから距離をとってください。 多くの場合はここまでの間にヒグマは逃げていきます。

 

そして不幸にもヒグマが立ち去らずにあなたに向かって突進してきたら…

川に遡るカラフトマスを捕食しにやって来たヒグマ。

2012年 KAMUY EXPEDITIONS 知床にて撮影

■ヒグマに向けて熊撃退スプレーを噴射してください。

有効射程距離は3m程度。

子連れの母熊には特に注意する必要がある。2015年KAMUY EXPEDITIONS 日高にて撮影。

ヒグマとの距離を取るために噴射する

熊撃退スプレーの有効射程距離は3〜4m程度しかなく、十分な効果を発揮させるためにはかなり至近距離からの正確な噴射が求められます。 スプレー自体に

殺傷力はないのでこれはヒグマの攻撃を防ぐ為に使用するものと思ってください。スプレーが効果を出せば若干の猶予が生まれ、あなたはヒグマからの第二第三の攻撃までの間に安全な距離を取りやすくなります。 スプレーが効果を発揮せずヒグマがあなたに襲いかかってきた場合は地に伏せて両腕で首の後ろを覆い、ヒグマからあなたの体の重要な部位( 内臓、頚部 )を保護してください。いずれにせよヒグマが自らあなたに対して興味を失って立ち去るのを待つ以外に方法はありません。

北海道には数多くのヒグマとの遭遇から無事に生還した事例があり、様々な対処法が巷で話題になっています。中にはナタでヒグマの顔面を殴り倒しただとかもみ合いになり投げ倒したなどの例も報告されていますが、興味半分に面白おかしく脚色されている部分もあり、あまりこういった話は参考になりません。ヒグマの生息圏内に立ち入ろうとするならば熊撃退スプレーの携行を推奨します。

 

■ヒグマの突進には真の攻撃とブラフ(脅し)の2種類がある

 

多くの場合ヒグマの突進は実際の攻撃を伴わないブラフ(脅し行為)であると言われています。この場合ヒグマは突進中に急激に立ち止まり、バックステップで後退するといった行動をあなたに対して反復します。ヒグマのこの行動を判断できた場合あなたには多少の行動する猶予が生まれます。ゆっくりと決して騒がずにヒグマから距離を取るための行動をとってください。そして間違ってもヒグマに背を見せて逃げないでください。

■最も大事なことはそもそもヒグマに遭遇しそうなエリアに立ち入らないことです!

ここまでヒグマとの突発的遭遇時の唯一有効な対処法としての熊撃退スプレーに関して書いて来ましたが、 これを読んだ方に決して勘違いして欲しくないのは熊撃退スプレーを所持したからといってそれがあなたの安全を100%保証するものではないということです。よく考えてみてください、高い緊張下で普段慣れない用具を上手く扱えるはずもありません。

 

むしろ熊撃退スプレーを所持して気が大きくなりヒグマの生息圏に深く入り込んでしまうことが最も危険な行為であるということを付け加えておきます。

河口に現れたヒグマ。  2013年 KAMUY EXPEDITIONS 知床にて撮影

■単独行動をしない

これはヒグマ対策に限らず釣りを含むアウトドア全般でとても大切なことです。万が一のことがあった場合にそのことを誰にも気づいてもらえないことの危険性を覚えておくべきです。特に北海道の渓流や湿原では単独での釣行を控えるようにしましょう。 

 

■渓流域や湿原に立ち入らない

渓流や湿原はヒグマの好むフキやミズバショウ、様々な木の実やアリの巣などをはじめヒグマにとって食料の宝庫であり、北海道ほぼ全域の渓流や湿原はヒグマにとって日常的な生活圏です。 渓流の水音は人間ヒグマ双方にとってお互いの発する音を消し去ってしまい、互いの発見を遅らせてしまいます。 熊除けの鈴の音やホイッスルも渓流の水音によってその効果の殆どを失います。さらに渓流は狭く高低差もあり倒木や大岩など互いを視認する上で障害になるものが多いなどヒグマとの突発的な遭遇が起きうる可能性は極めて高い環境だと言えます。湿原も同様に背の高い葦原はお互いの視認を難しくします。 ヒグマによる足跡を始めフキの食痕や糞、先行者がいないはずなのに河原の岩が濡れているなどのサインに注意し、それらを見かけた場合はすぐに引き返す勇気を持つことが必要です。

 

 

■鈴や笛など音のするものを身に付ける

ヒグマは人の存在に気づくと物陰にじっとして動かずこちらをやり過ごそうとする事が多く、音の出るものを使用することはヒグマとの突発的な遭遇を避ける上で有効だと言えます。しかしながらヒグマの発する音に対してこちらが気付きにくくなるのでその点は注意が必要だとも言えるでしょう。

 

 

■犬を連れていかない

犬は人よりも嗅覚が鋭くヒグマの存在をいち早く察知しますが、ヒグマに吠え掛かってこちらをやり過ごそうとしているヒグマをかえって挑発してしまい、防衛行動を誘発してしまう危険性が高くなります。 ヒグマの生息圏に犬を連れていってはいけません。

 

 

■食物の匂いは強烈にヒグマを誘引します

一度人間の食物の味を覚えたヒグマは以後それらに対して執拗に執着するようになります。人に対して食物を重ねて認識するようになったヒグマは人を恐れなくなり結果的に不幸な事故を引き起こすきっかけとなってしまいます。  北海道では渓流や山間部でのキャンプによる煮炊きや釣った魚の調理なども含めてヒグマの生息圏内での調理は厳に慎むべき行為です。 止むを得ずビバークするような場合は匂いを出すような調理はせずにエネルギーバーなどの非常用行動食をテントから離れた場所で食事として取るか、どうしても調理が必要ならテントから最低でも100m以上離れた場所で調理を行い、夜間の食料の保管は高い木に吊るすかフードロッカーを使用するなどの対策が必要です。

 

​コラム: 増える令和のヒグマ

 

​北海道は令和の現在ほぼ全域でヒグマの野生個体が急激に増えてきている。  令和になってヒグマがこれだけ増えている最大の理由は平成や昭和の頃のように盛んに駆除が行われなくなったことである。  どうして駆除が進まないのか??  ‥この理由を調べて深く掘り下げていくと、現代の社会・経済の暗部に行き着いてしまい、ここでもやはり憂鬱になってしまうのだ。   北海道のヒグマは以前「春グマ駆除」と呼ばれ、雪解け時期の春に全道的に日本猟友会の専門のハンター達によって、毎年一定の目標を持っていっせいに頭数管理が行われてきた経緯がある。  現代ではハンターの高齢化や後継者が少ないということはとかくニュースなどでも話題になっているが、それらの背景にはより深い実情として「ハンターの報酬額」がリスクに対して見合わない、といった根本的な問題が存在しているのだ。 見習いの若いハンターがヒグマを射殺するに事足りる十分な殺傷力を持ったライフル銃を所持するためには、最低でもだいたい8〜10年の年月がかかると言われている。 その間、ただでさえハンターは銃器類の維持管理に膨大な手間と時間とお金がかかるが、それらを国や自治体が財源を持って保証してくれるわけではない。  あくまでも現代日本において「ハンター」という職業は個人の趣味の延長なのである。ハンターが射殺した動物は毛皮や食肉として加工されるために現金化する仕組みは今でもかろうじてあるにはあるが、その額はたかがしれたものであり、専門のハンターとして生計を立てて生きてゆくにはそれだけでは到底不可能なのが現実である。 

 

またそこに追い打ちをかけるように最近になってハンターの若い担い手希望者をさらに減少させるような訴訟問題も起きている。自治体からヒグマの駆除依頼を受けたハンターに警察官が現場の確認のために同行し、現場でハンターと警察官は互いに意思疎通をした上でハンターはヒグマを射殺することに成功した。‥そこまでは良かったのだが、後日になってこのハンターの狩猟免許と猟銃の所持許可が同行した警察官の証言によって停止させられるという理不尽とも思えるような処分を下されたのである。  現在、当該の猟友会はこの処分を不服として国を相手に訴訟を起こしているが、実際に射撃が行われた場所はやはり射撃が本来認められていない場所であるという事実は変わらず、処分が覆ることはなかったのである。  日本で警察官や自衛官以外の者が銃を所持し使用することについては極めて厳しい厳格なルールが課されている。  野生動物が増えて様々な農業被害や人的被害が増えてきており、駆除のニーズはこれだけ高いにも関わらず、実際にそれを行う職業者に対しては何ら国や自治体は予算を割くことも今後の予定にないし、現役の老齢なものや若いハンター志願者を支援するために法律や規制を緩和するという動きもまったく見られないのである。   このような状態で今の若い人たちが果たして「ハンター」という職業を生き方として選ぶ者がいるであろうか??   

 

間違い無いのは令和の現在、駆除がほとんど行われなくなってしまったヒグマは急激にその頭数を増やしており、それに比例して目撃件数や民家などへの侵入騒ぎが増えているのである。    

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北海道の釣りガイドKAMUYは北海道で唯一のドリフトボート、カヤック専門フィッシングガイドサービスです。イトウ、アメマス、ワイルドレインボーなど北海道を代表するネイティブトラウトの釣りを強力にガイドします。
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