ガイド日誌 -Recent Highlights
Oct to November, 2018
10月中旬
日本最北。 「稚内空港」
羽田、関西、千歳からの定期便が連日就航している。羽田から稚内に13:00頃到着するANA571便はイトウ狙いのアングラーが利用する「いつものおなじみ便」 ガイドは到着ロビーでゲストを迎え、空港到着から1時間後にはもうキャスティングが可能だ。 KAMUYのイトウガイドではこの初日の午後に早速最初の1尾に出会うことも多い。
イトウ釣行の成否に大きく関わるのは「天候」 10月はイトウシーズンの中でも比較的温暖とはいえ、台風がらみの降水によって川が増水して濁ってしまうこともあるし11月になると今度は急激な気温の低下によって川の水が冷やされておこる「ターンオーバー現象」 が強い濁りと水中の低酸素によって魚の活性を極端に下げるために最大の障害となる。
良い状況は極端な河川水位の変動と朝晩の気温の変化が少ない状態が数日続いていること。そして最終的には水の質が良いこと。
はっきり言って良い状態を事前から予測することは不可能に近いというか不可能だ。しかしながらこの時期の天候はおおよそ3〜4日周期で変わるため、成功を期するためには最低でも4日間以上の日程を組むことが必要になる。 4日あれば最悪3日間ダメでも1日はチャンスに当たるという寸法。 そういう意味で運はここでも大事。うまくすれば4日間毎日イトウが数多く釣れる。 予算や都合の関係で4日以上の日程が取れない場合や天気予報を確認してから釣行を決めたいという場合は直前での問い合わせとなる。 2日前までであれば急なオーダーにガイドが対応できる場合もあるので諦めないでほしい。
透明度の高い「紅茶色」
ガイドは現場で水質を見てそこにいるイトウが釣れる状態にあるかどうかをまず判断してる。 水が良くなければデータと経験に基づいて流域内でポイントを変更してゆく… 良いポイントに行けば誰もが必ず釣れるという釣りではない点に注意。
この紅茶色の水の時イトウはよく釣れる。
大雨後の濁りはこんな透明度の無い「カフェオレ色」 増水であれターンオーバーであれ濁りは極端にイトウのヒット率を低下させる。 前日夜半からの集中した降水でこの日は全域がこの濁り。 案の定この日の釣りはノーフィッシュに終わった。
ターンオーバー時に顕著なうっすらと白っぽいタイプの水色。「スポーツドリンクの様な色」といえばわかりやすいか。 明瞭な見分け方は水面の泡がこういったターンの水面ではなかなか消えずに残るということ。ルアー着水後の水面の泡が消えずに残る様な場合はターンオーバーが起きたと思って良い。ターンオーバーは日中と朝晩の温度差が大きくなる晩秋や春先に多いが、魚の活性を極端に下げるため一度水がこうなるとなかなかヒットしない。 このイトウは11月中旬のひどいターンの日に川岸のボサ下でスピナーベイトのスローロールでなんとかヒットさせた。 前日は最高気温10度からの最低気温0度。 未明から明け方にかけての強烈な放射冷却による急激な冷え込みで川の水は全て白く濁ってしまった。 朝から午前中にかけては完全沈黙のノーフィッシュ。少しでも水の生きている場所を探し回って夕方近くにやっとの思いでヒットさせた思い出の1尾。 晩秋から初冬にかけての時期はこのターンオーバーがその日の釣果を大きく左右する。 多くの場合ターンオーバーは夜間に雲に覆われない「放射冷却現象」によって引き起こされる。
天気は単に晴れれば良いというものでも無いので、この時期の快晴の予報にはむしろ注意したほうがいいってこと。
ターンオーバー時、大雨増水時少しでも「良い水」の状態を探して湿原を広範囲に移動する。ドリフトボートはこんな時にこそ最大限にその力を発揮する。 通常ターンでも大雨でも水質は水源に近い上流から徐々に回復してくるが 反対に朝イチに中流部で水が良くても昼前あたりになって上流から悪い水が流れ込んできてガッカリするという様なことも多く、現場での経験と判断がイトウの釣りの成否を大きく分ける。 水質・川の流速・水色・水温・気温・時間帯・ベイトフィッシュ・ポイントなどと更に合わせて時間経過による状況の変動などなど… 世間ではイトウ釣りはポイントが全てだと思っている人が多い様だが決してそうではない。 これらをトータルに計算に入れてKAMUYガイドはその日の釣りを最善に近い様にコーディネートしている。
全てはゲストの良い釣りのために。
よく聞かれることの多いイトウタックルをここで少し詳しく紹介。
KAMUYではブラックバスのボート用タックルがそのまま流用できると考えてくれれば良い。ただ、想定する魚の重量がバスのそれに比べて重いのと基本的にカバーがらみの釣りになることが多いこと、イトウの歯が鋭いことなどを念頭においておく。 イトウのアベレージ重量は1〜4kg程度のものが多いが1mを超過する個体になると20〜30kg近く成長するものも生息しているためそれなりの備えが必要になる。
ライトリグ寄りなら3/8オンス程度のルアーをキャストしやすい7ft前後のスピニングロッドML〜Mくらいのパワーがあれば良い。 重く大きなルアーを使いたい場合や湿原河川のヘビーカバーに対して積極的に打ち込んでゆくような釣り方をメインに考えるならMH~XHベイトタックルの使用を勧めている。 ラインはライト寄りのスピニングの場合であってもPEの1.5〜2.0号 くらいは最低あったほうがいい、ボートのイトウ釣りでは存分にラインを出させて泳がせてやるようなスペース的な余裕がない場合も多くあるためだ。 ベイトなら8号以上の強力なPEラインを用いて鬱蒼としたカバーの真っ只中を狙うことも可能になる。どちらの場合も予備を含めて150mもスプールに巻いておけば十分。 イトウの歯切れ対策としてショックリーダーは30〜50ポンドのナイロンラインを50〜60cmも足しておけば良いがメインラインがPE6号以上ならそれも必要ない。
最近少しづつ市場に出回るようになってきた海外遠征用のパックロッドも適してる。
写真はSHIMANO world shaula ツアーエディション
この他にもAbuGarciaのWorldMonsterなどもイトウに適しているだろう。
全体を通してスプーンが最も使いやすい。 基本的には流れに対しアップクロスにキャストして沈めながら下流側を扇状にスイングして誘うオーソドックスなスタイル。
定番はDaiwaのチヌーク。 シャローに7g、通常用に10g、少し深い場所用に14gと17gを各色揃えれば良い。
イトウは様々なカラーに反応するが”チャート”と”ブラック”、”オレンジ”の3色は必ず用意していく。
余談だが知り合いの北米のガイドもこのスプーンを使用しゲストに勧めているのだとか… 向こうではフレッシュランのシルバーサーモンとキングにこれがとってもイケてる😝とのこと。
「日本のイトウにもいんだよ😏」 と言うと 「やっぱりな! いいルアーはどんな魚にもいいんだ。」と大層お気に入りな様子でありました。
デフォルトで3本針が装着されているが魚体へのダメージを最小限に止めるためにシングルフックの使用をお願いしている。 フックはSMITHのシュアーフック ヘビーデューティ9Gを勧めている。
水深の深い場所に極めて効果的なバス用のディープ系シャッド(パワーダンク/ O.S.P )
水深が3m以深のボトムを小突いて回ると効果的。長いリップが何かにヒットした直後に前転倒立する動きを意図的に演出してやると、深場の底に寝そべるやる気のない日のイトウも思わず口を使ってしまう。この種のルアーはスタック回避能力が秀逸で根掛かりで精神的に消耗させられることも少なく、イトウの生息する湿原河川で状況適合するパターンはかなり多い。ツアー必携の一軍ルアーとなっている。
ターンでタフな状況に陥った場合にサスペンドシャッドが効果的。使い方はロッドストロークで一振り分泳がせてからのストップで食いを待つ感じ。バスとイトウはいろんな意味で似ている部分も多い。
メガバス 2018年秋のこの時点で発売間もない最新のiXi(アイバイアイ)シャッド。「イマエゴールド」は湿原河川の透明度の高い紅茶色を彷彿とさせるカラー。早速イトウがヒット。いずれのシャッドもフックはテール側シングル1本のみに交換している。 イトウのバイトは多くが後方追尾からの「吸い込み型」。 フックはたいていの場合上顎にキレイにかかり、バラシは少ない。
ルアーフィッシングでは長い距離を魚に追わせることが最終的に良いフッキングにつなげる上で必要なこと。そして追わせた後の最後の締めくくりとして捕食者の本能を刺激してバイトを誘発するようにルアーを意図的に停止させて沈下させる方法が項を奏することが多い。 そういう意味で身を震わせるような水平フォールを発生する絶妙な重量配分に仕上がっているANRESのアレクサンドラは信じて任せることのできる数少ないルアーの一つ。 現場ではスプーンで食わせきれない時の切り札的存在になっている。
水中のヨシ原に潜んでベイトを待ち伏せするイトウにどうアプローチするか… この日の正解はスピナーベイトをゴリゴリ通すことだった。
使用ルアーはノリーズ クリスタルS 3/8オンス タンデムコロラド・ウィロー
ワイヤー系は地元のアングラーの間ではまだまだ浸透度の低いルアーだが、百戦錬磨の現場を知るアングラーやガイドならばスナッグレスで広範囲にアピールし、不意のリアクションも取ることのできるこのルアーの優れた設計思想には刮目せねばならない。
スレとは全く無関係のここのイトウたちには極めて有効なパターン。
泥底の皿池状態に近い環境の湿原河川。 スプーンよりも強い波動でテンポよく広範囲をサーチするためのルアーといえばバイブレーション。 ジャッカルのTNシリーズは着底姿勢が他社のデザインに比べて安定している。 同社TNシリーズのファンならばぜひこれを使って北海道のイトウを釣らねばね…😜
トップで釣れた例。
ルアーはメガバス DOG X Jr COAYU
希望者にはとっておきのトップウォータースポットへ案内してる。 ルアーならペンシルやポッパー、フライでは小型のヤチネズミを模したドライフライを使用するのが人気のパターン。
「ガボッ」…と勢いよく出ることは少なくて、水底から「ぬらっ」と現れて水面のルアーやフライを一瞬観察してから「ユラっと」咥える。 普段からそういう捕食行動してるのだろか… こちらがよほど驚かさない限りだいたいいつも出てくるあたり、ここのイトウたちは警戒心が薄い。
地元、稚内市内の釣具店のご主人が巻いたネズミフライ🐭…あそびごころって大事だなって思う。
「おーっ あんたらみたいな若いヤツらでイトウ釣りやるやつほんと少なくなったもなーっ❗️ でっけーのいるんだぞーこの辺❗️ 今回もたっぷり釣ってけやー❗️ オレなんかなー昔はよくメーターオーヴァー年に10本も20本も釣ったもんよー❗️ こんのクレーのやつよー(おじさん両手いっぱい広げ=推定180cm ) 盛ってます…?草
でも好きです。そういうノリ
[「今回これでイトウ釣ってみたくて持ってきちゃいました❗️😝」
といってゲストが嬉しそうに見せてくれたジョイクロ。(ジョインテッドクロー/GAN CRAFT )
「あー ジョイクロだー❗️ 僕も持ってました😍」
イトウは釣れなかったけどアメマス釣れてました。
※もちろんフックはシングル1本に交換していただきました。
左からデスハチ(デスアダー/8inch/デプス)、チャターベイト(イマカツ)、ディーパーレンジ(ノリーズ)、クリスタルS(ノリーズ)、バブルトルネード(エバーグリーン)
…これら全てイトウに有効なことを確認済み。 本州でベイトタックルを使ってる人は日本最北端のイトウをこれらのルアーで釣ってみるべし❗️
16:00 日没直前のヒット。
秋の夕暮れは早い。 日が傾くと急激に気温は低下する。
防寒装備は十分に!
10月〜11月の道北湿原河川の最低気温は−5度。 ボートの上ではほとんど動かない上にこの地域特有の強風が吹き続けることもある。 必要な防寒の度合いは以下のガイド装備を参考に。 …結構なガチ防寒❗️
アウタージャケット:NORTHFACE サミットシリーズBELAYER PARKA
ミドルレイヤー:NORTHFACE THUNDER JACKET
アンダーウェア:ミズノ/ブレスサーモヘビーウェイト
ウェーダー:SIMMS/ G4Z US-L (夏はJXLを使用。 寒冷期は普段よりも1〜2サイズ身頃の大きなものを着用して中間保温層と動きやすさを確保)
水面付近でのヒット。
釣り系ユーチューバーの彼は良い映像が撮れたと満足げだった。普段は釣りと釣り魚料理の映像などで人気を博している彼だがこの時ばかりは貴重なイトウ釣りでのC&Rマナー遵守のこちらからのお願いも快く受け入れて氷点下の冷たい水に手を浸して協力してくれた。
10月中旬のこの時の釣行ではこの位の小さめサイズがいっとき入れ食いだった。 条件の良い日では1日2桁キャッチも普通にある。 いちおう断っとくとここは釣り堀ではない。 放流増殖事業なども一切行われていない完全ネイティブの聖域。
フライ勢のオジサマ達もヤングに負けじと釣!
太古の昔からこの原野の主人として人しれず世代交代を繰り返してきた湿原のカムイとフライラインを通して繋がった日…。
イトウはアイヌ語で「チライ」
釣行初日、まさかの台風濁りのカフェオレでこれはピンチか…!? と思ったら次の日にはスッキリ澄んだ紅茶色に戻っているという意外にも回復力の高い湿原河川…
2018年も勇気を持って挑戦した全員が見事にイトウをマルチキャッチ。
12月も水面さえ開けばまだまだ釣れるんだけどね…少々Mな釣りになりそうで私達のカラーではないのでやめといております😝
冬と産卵の春はイトウ狙いはちょっと我慢して2019年は初夏のイトウも参加者募集してます🙂
稚内でのおすすめグルメの「タコしゃぶ」
諸君、原野の釣りで冷え切った体を温泉で労わりほぐしてからホテル近くの居酒屋に夜な夜な足を運ぼうじゃないか…😛
最北の釣り旅に乾杯!🍻